第62章 盗撮

『アビス』のラスト数シーンは、三番手女優の回想パート――かなり攻めたベッドシーンだった。相手役は無名に近い若手男優。顔立ちは悪くないし、筋肉のラインも綺麗に出ている。

杉浦杏奈は台本を当たっても、ほとんど何も感じなかった。前世でどんな基準をくぐってきたと思っているのか。布団越しに腰を擦りつける程度の芝居なんて、前菜にすらならない。

それでも、灰原仁司のあの無表情な冷たい顔を思い出すと、ついメッセージを送ってしまう。

「灰原社長、明日わたしのシーンあります。ベッドシーン。見学に来ます?」

しばらく既読もつかない。返ってこないかと思った頃、スマホが震えた。

「行かない」

たった一言。...

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